コナン映画「ベイカー街の亡霊」はなぜ唯一無二なのか?

こんにちは。
コナン映画の最新作「隻眼の残像」を観てきました。映画しか観ない勢なので、正直知らんキャラが多くてやや置いていかれたw
最近のコナン映画もいいですが、自分の中で唯一無二の名作はやはり「ベイカー街の亡霊」です。
連休で時間を持て余しているので改めて観てみたんですが、何回観てもめちゃくちゃ面白いです。
というわけで、なぜ「ベイカー街の亡霊」が唯一無二なのか、メモしておきます。もう何番煎じだって項目もあると思います。
死(ゲームオーバー)への緊張感
本作は「コクーン」という、五感に働きかけて仮想空間でゲームを遊べるという代物を中心として物語が展開されていくわけですが、歴代コナン映画において「仮想空間」が舞台になっているのは本作のみです。
これがどういう効果をもたらすかというと、「死(ゲームオーバー)への緊張感」です。
コナンという作品は、基本的に中心人物(少年探偵団、蘭など)が退場することはないので、それらの人物が致命傷を負うことはまずありません。なんだかんだ助かります。
が、本作は仮想空間が舞台なので、それらの人物に致命傷を負わせる出来事も描写できてしまいます。
実際、元太は銃で撃たれますし(ネットで有名な消えるシーン)、蘭は谷底に飛び込みます。
もちろん最終的には助かるわけですが、仮想空間上であったとしても、登場人物が致命傷を負う描写があるだけで、物語に緊張感が生まれます。
設定の中での無理のなさ
先ほどの話とやや重複しますが、設定の範囲内で無理がないのも魅力です。
最近のコナン映画は、「緋色の弾丸」でリニア大事故の中でも無傷で生き残ったコナンのように「さすがにそれは無理があるやろ」という展開がちらほらありますが、本作はそういった無理があまりありません。
もともとの設定自体が仮想空間・人工知能とぶっ飛んでいますが、それ自体は大前提ですんなり受け入れられるようになっていて、その後の展開を設定の範囲で丁寧に作り込んでいる印象を受けます。
冒頭で真犯人が判明している
実は、本作は歴代コナン映画の中で唯一「冒頭で真犯人が判明している」作品です。(犯人が黒の組織の場合を除く)
「水平線上の陰謀」は冒頭で犯人が明かされていますが、真犯人は最後までわかりません。
犯人を最初に明かしてしまうことによるメリットは「殺害シーンを黒いアレではなく本人で描ける」点と、「推理で追い詰められる犯人の様子を詳細に描ける」点です。
コナンの殺害シーンの犯人は、いわゆる「犯沢さん」スタイルで描かれるので、表情の仔細まで伝わってこないことが多いです。
しかし、本作の殺害シーンはトマス・シンドラーの表情や仕草がはっきりと描かれているので、殺害シーンが非常に緊迫したものとなっています。
また、優作の推理にトマス・シンドラーが追い詰められていく様子も見応えがあります。
目的が真犯人の特定ではない
ただし、冒頭で犯人を明かすことによるデメリットもあります。当たり前ですが、犯人がわかってしまうので、推理的なドキドキが薄れてしまいます。
しかも、本作はアクションもド派手ではないので、犯人の特定という一大要素を失うことは大きいように思えます。
にもかかわらず本作が成立している理由は、物語のゴールが「真犯人の特定」ではなく「ゲームのクリア」にあるためです。
本作は、現実世界では真犯人の特定を、仮想空間ではゲームのクリアをゴールとして進行していきますが、物語全体としては「ゲームのクリア」がゴールに置かれています。
真犯人の特定は、仮想空間の進行を引き立てる要素というわけです。
仮想空間という特殊な設定があるからこそ、先に犯人を明かしてしまうという展開が成立しています。
博士の道具が使えない
本作が唯一無二である要素は他にもあります。「博士の道具が使えない」という点です。
歴代コナン映画において、博士の道具を一切使っていないのは本作のみです。他の作品は、いつものやつ(スケボーとかバッチとか)から映画限定のアイテムまで、何らかの形で博士の道具に頼っています。
しかし、本作は仮想空間という設定を利用して、コナンに対して「道具が使えない」という縛りを設けています。
これに「死」の緊張感があいまって、状況を打破していくコナンの頭脳や冷静さ、力強さを他の作品とは違った形で引き立てることに成功しています。
かつ、舞台は 19 世紀末のロンドン。コナンの「チート」を封じることで、コナンとホームズがうまく重なっているのも特徴です。
もし、道具が使える状態なら、もっとパワープレイで問題解決できてしまうので、コナンとホームズが重なることはないでしょう。
コナンが一度折れる
記憶している限り、これも歴代コナン映画で唯一だと思うのですが、物語のクライマックスでコナンが一度完全に諦めます。「もうダメだよ…」とつぶやきます。
ここでおっちゃんが「おいおい諦めるなよ!」と叫ぶわけですが、観ている方も同じ気持ちw
コナンがここまで心折れるのは珍しいですよね。それだけ状況が困難である、ということが伝わってくるめちゃいいシーンです。
もう少し触れると、普通なら「列車から飛び降りる」という選択肢が取れるわけですが、本作では「怪我したらゲームオーバー」という縛りがあるのでそれもできない。
本当にうまくいろんな要素が噛み合っているなぁと感心します。
まとめ
というわけで、「ベイカー街の亡霊」がなぜ唯一無二なのかについて、書き散らしてきました。
これだけの条件を揃えた作品は、今後現れないだろうなと思います。というか、現れるとしたらほぼ真似事になってしまいそう。
まだ「ベイカー街の亡霊」を観ていない方は、ぜひ観てみてください。